ゲティ家の身代金(All the Money in the World)



あらすじ:17歳のジャン・ポール・ゲティ三世が誘拐されてしまう。誘拐犯に身代金1700万ドルを要求された母は、世界一の大富豪であるおじいちゃんに助けを求めるも、おじいちゃんは世界一のケチだった。

誘拐されるジャン・ポール・ゲティ三世の母親役のミシェル・ウィリアムズが良かった。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」や「ブロークバックマウンテン」、まだ観てないけど「ブルーバレンタイン」など、不憫な奥さん役多い(しかもだいたい夫が悪い)が、芯の強さが見える感じがもともと好き。ということで今回は今まで以上に可哀想な立場なのに絶対諦めずに息子を救おうとする強い母親だったのでどう見ても最高でした。venomでも主演のトム・ハーディの元奥さん役なのが楽しみ。venomになっちゃった元夫のことも救ってくれるんじゃないですかね……

この映画、ケビン・スペイシー降板や、それに伴い撮り直したギャラの男女格差やら何かと映画そのもの以外での話題が絶えないですが、私は何よりリドリー・スコットが好きで仕方ないよ。ジャン・ポール・ゲティの孫には死んでもなりたくないがリドリー・スコットの孫にはなりたい。以下リドスコと呼びます。

巨匠なので言うまでもないですが、映像第一主義で画面が本当に綺麗。もう好きな画家の絵を見に美術館に行く心境に近い。「プロメテウス」の監督音声解説がすごく面白かった。映像見ながらこれはどうやって作ったか、と細かい解説してるし、「これが私の求める映像だ、と断言して戦うのが監督の仕事」とか言っててかっこいいのに「デザイナーを増やせる予算をくれなかったから少人数でやった」「いい加減予算とか考えないで好きに撮らせて欲しい」とかぼやき入ってるのもいいですよ…
映画と画家の関係でも、映画の映像に引用されている画家のタッチなんかを挙げましたが、リドスコはありとあらゆるところから引っ張ってきているのでしょう。今回は強いて言えばカラヴァッジョとかでしょうか。

大富豪おじいちゃんの家にあふれんばかりの美術品がある。(フェルメール飾ってあったね。)それらがめちゃくちゃ美しく撮られていてわ〜綺麗だな〜と思ってしまうけど、「結局モノの価値ってなんなのよ」ということがテーマの一つでもある物語なので、美しいものを美しく撮ること自体が皮肉でもあり、美術畑でそれやっちゃうリドスコ最高と思った。あとやっぱりマイケル・ファスベンダー(※1)のことはギリシャ彫刻だと思ってらっしゃるな、と今回確信したね。

「プロメテウス」「エイリアン コヴェナント」と来て三部作の最後となる続編、今のままだとつくれないっぽいともっぱらの噂ですが、ぜひこの映画で儲けてつくってほしい。
頼むからリドスコにマイケル・ファスベンダーを好きに撮らせてあげてくれ!!


(※1)「プロメテウス」で宇宙船に乗るロボットを演じる。「エイリアン関係なくない?」と思うほど彼のシーンが必要以上に美しく、続編コヴェナントでは同じ顔のロボットがもう一体出てきて(つまりマイケル・ファスベンダーが一人二役)、まだ足りないのかよ…と笑った。

コメント